最近報道等で言われる「嘘ニュースサイト」とその様々な類型

米国大統領選挙で暗躍したと言われる話が出て以来、「嘘ニュース」について世界的にニュースになることがよくあります。そしてそれらの発信源として、「嘘ニュースサイト」というものを日本の報道記事で見かけることも多くなりました。
しかし、これらの「嘘ニュースサイト」というものについてはそれまで滅多に使われることのなかったせいか、かなり定義が曖昧で、実際は性質が微妙に違うものも「嘘ニュースサイト」としてまとめられている感じがあります。しかしそれらを一緒くたするとちょっとニュースの捉え方の印象が違ってしまう気ががしたので、これらの嘘ニュースの記事を正確に捉える意味でも、一緒くたに語られることの多い「嘘ニュースサイト」についてちょっと種類分けをしてみたいと思います。

ちなみに現在、日本語における「嘘ニュースサイト」という語句について明確な定義があるわけではないので、以下に書くものは私が自分の中の認識で分けたしたものになります。故にこれが絶対的指標ではなく嘘ニュースサイトとひとことで呼ばれるものにも、こういう種類があるという参考としてください。

Fake news site(フェイクニュースサイト)

アメリカ大統領選で話題になったものとしてはこれがあります。これは明らかに偽の情報を流し、デマの発信源となるもの。ただし全部が偽物というわけではなく、本当のことに嘘を混ぜ込み、その運営主の意図する方向にもってゆくという手法が採られているケースが多いものです。
そしてこれらの多くは報道各社のサイトなどと同じように報道としての形態が採られており、知らない人が見たら普通の報道各社の記事と同じに見えるというのが特徴。

実はこれも大きく分かれていて、ひとつは既存の大手報道サイト、もしくはその関連であるようにやサイトデザインを装い、嘘ニュースを報道するもの。そしてもうひとつはそれらと関係のない独自サイトだけど、嘘ニュースを発信するもの。前者はその本家とURLが似ていたり(たとえば~~~.comのところが~~~.com.deになっているとか)、サイトデザインがほとんど同じだったりしますが、そのためその嘘ニュースの話題さえも本家が発信したものと錯覚され、その権威で話題(デマ)が拡散されてしまうという性質もあります。
余談になりますが、このURLの一部だけ変えたり、サイトデザインを同じにしたサイトで錯覚させるというのは、フィッシングサイトなどネット詐欺でよく使われる手法ですので注意する必要があります(最近だとメールで公式を装ってリンク踏ませるのが多いですね)。

これにおける運営者の目的は何か。これは多数あるフェイクニュースサイトそれぞれに違うでしょう。ただの悪戯の場合、個人及び組織の政治的思想で行動し、自分たちに有利な情報を広めるためにやっている場合など。さらにはそれらのデマというものは衝撃度が強くなり、注目、そしてPVを集めやすいため、単純に利益のためにやっているというケースもあるようです。

さて日本にもこの定義で「Fake news site」となるとそれは存在するかとなりますが、もちろん存在します。ただ、どちらかというと一次ソースとしてではなく、2chなどまとめの形を取られることが目立っている印象です(これを「Fake news site」に含めるか新しい概念のものかは判断が難しいところですが)。

News satire(ニュースサタイア)

それに対し、News satire(ニュースサタイア)というものがあります。日本語訳すると「風刺ニュース」となるものです。
これらは、「風刺」の文字通り、冗談ニュースを発信するサイト。もうちょっと定義を拡大すれば「ジョークサイト」のニュアンスに近いでしょうか。
これらは嘘ニュースが話題になる前から海外ではかなり存在していました。有名なところでは、アメリカのThe Onionなど。
日本で嘘ニュースというと「虚構新聞」が有名ですが、こちらもどちらかといえばこのカテゴリに入るのではないでしょうか。

しかし「風刺」「冗談」といっても一概に語れるものではなく、サイト毎に特徴が違います。まずは明らかに風刺とわかるように作られているものもありますが、そのサイトのことを風刺サイトと知らないと誤認してしまう可能性があるもの、もしくは明らかに事実と誤認させるような危険性があるものなど、サイトどころか記事によってかなり違います(これは書き手の意図のみならず、文章力でも出てくるのでしょうが)。また、風刺サイトであることを明記しているものがある反面、明記していない、もしくはかなり目立たないところに言い訳用な感じで書かれているというケースも多く見られます。

区分けが難しいFake newsとNews satire

しかし実際にはFake newssiteとNews satireは見分けがつきにくいのが現状です。というのは自らの嘘ニュースサイトと語るサイトはないので。
そして嘘であることが指摘されても、「これは(冗談を目的とした)News satireだ」と主張するケースも多いです。たとえばアメリカで偽ニュースサイトが話題になった時、CNNサイトそっくりの「cnn.com.de」がそう主張していたようです。
そしてNews satireの中にも、明らかにお笑いとかではなくデマを発信することを目的としているんじゃ? と思うようなものもあります。

しかし、人の、つまりその運営者の内心を計ることが不可能な以上、明確にそれが何らかの利益を持って嘘を発信させているか、それがお笑いを目的とした冗談かなどといった理由はわからないのです。

発信源の認知差と伝言ゲーム

そしてNews satireの場合でも、読み手がそれとわかって捉えているかという問題もあります。それが嘘(冗談)を発信すると分かっている人にはいいとしても、分かってない人には偽の情報を発信しているということでFake newsと同じと見做されても不思議ではないでしょう。
さらに現代のネットでは、SNSを通じて記事が紹介、拡散されることは多いですが、その過程でソースがFake newsであるということが薄くなる、もしくは消失し、News satireの存在を知っている人でもそれが本当のニュースとして受け止められてしまうこともあるでしょう。

とりわけ日本で海外からのニュースでデマが伝わる場合、他国語のため多くの人にとってよくわからないのが災いし、これらの風刺サイトの記事をソースとしたものがTweet、もしくは海外翻訳系ニュースやまとめサイトを経由して広まる場合が非常に多く見られます。海外ニュースはこれらがソースではないか確認するだけでも、かなりデマの真偽判定に役立つと思われます。

以下News satireのことも含め過去に書いたのでご参考に。

ネットで流れてくる海外の驚愕系ニュースは一度嘘を疑う方がいい
先日、このような記事を書きました。これは大元が海外のサイトで、それがTwitterで伝わり、さらに2ちゃんねるやまとめサイト、及びそのTweetで拡散した形というのはそこで書きました。しかしこのような例は今回だけではなく、このような海外の仰天ニュースが嘘だった、という例は非常に数多くあります。今日は何故そういうものがデマとして伝わるのかという話を。

まとめ

このように、昨今報道やネットで「偽ニュースサイト」と一口に言われているものでも、その存在の位置づけや目的にはいろいろなパターンが存在しています。これを細かく言い表す便利な語句がないことと、報道ではそれらを分ける必要性があまりないので「嘘ニュースサイト」でまとめられているのかもしれませんが、このへんを一緒くたにしてしまうといろいろ見誤ることがありそうです。たとえば虚構新聞的な冗談色のものが大統領選挙に影響を与えたとか、それをGoogleやFacebookが排除に乗り出したとなると、微妙にニュアンス違いが生じるでしょうし。故に今日はこのへんについてざっと書いてみました。

しかしさらにこれらに加えて、「デマのような情報なのにそれの真偽を取らずに発信し続けるサイト」も、ネット上では偽ニュースサイトと呼ばれることがあります。最近Welq問題で話題になったバイラルサイト、キュレーションサイトやまとめサイトの類で出て来ているものですね(一部で「(ゲーム)迷惑サイト」なんて言葉も生まれてましたが)。これについては、Fake news siteに含まれるのか、それとも別の新しい概念なのかについては、そのうち書こうと思います。

参考

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