ネットで流れてくる海外の驚愕系ニュースは一度嘘を疑う方がいい

先日、このような記事を書きました。

「ゲイの家に入った泥棒が監禁され強姦され続けた」というデマ
2016年10月12日 10時27分。海外の新聞記事の写真と共に、 "アメリカ・フロリダ州にて、2人の泥棒が ”とある家” に侵入した結果、そこが実は男性をレイプし10年間刑務所にいたゲイの家で、2人の泥棒は地下室に拉致され5日間

これは大元が海外のサイトで、それがTwitterで伝わり、さらに2ちゃんねるやまとめサイト、及びそのTweetで拡散した形というのはそこで書きました。

しかしこのような例は今回だけではなく、このような海外の仰天ニュースが嘘だった、という例は非常に数多くあります。今日は何故そういうものがデマとして伝わるのかという話を。

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過去のデマ一例

では、過去の一例から。

「2年前に消息を絶った旅客機のパイロットが生存していた」とでっちあげているアメリカの嘘ニュース・サイトについて、少し。
「2年前に行方不明になったマレーシア航空便のパイロットが、台湾で発見」とかいう "ニュース" (←引用符つき)があると聞いた。 結論だけ先に書くと、これは英語圏の「嘘ニュース」、「冗談ニュース」サイトの記事をご丁寧に日本語化した個人ブログである。大真面目に受け取るべき「ニュース」ではない。 しかしそれが「はてなブックマーク」で何百というブ…
「レッドブル」飲んだ米国人「死亡報道」で大騒ぎ 日本のまとめサイト「デマ情報」に引っかかり、相次ぎ「謝罪」
エナジードリンク「レッドブル」を大量に飲んだアメリカの男性(38)の心臓が張り裂けそうになり、病院に運ばれ死亡した--。そんなアメリカ発のニュースがネット上に流れ、日本国内のまとめサイト大手が次々に「事実」として記事にしたことで大騒ぎになった。以前から「レッドブル」を大量に飲めばどうなるのか、といった議論が出ていて、心臓病を抱えている人は飲むのを避けたほうがいいという有名な話があり、今回の男性死亡

ほかにも多数(リンク一部修正)。

傾向としては「えっ?! そんなことが!」と、上品な意味でも下品な意味でも読者を驚かせるものが多数です。

さて、これらは海外からのデマになりますが、それのソース元として非常に多いものがあります。それが”News satire”(風刺ニュース)と呼ばれるもの。

 

“News satire”とは

日本では「虚構新聞」と呼ばれる、ネタニュースサイトがあります。文字通り虚構、嘘のニュースを面白おかしく伝えるネタサイトで、かなり昔から存在しているので知名度も高い方でしょう。文字通り「虚構」と入っているので、実際見ればそれとわかりやすいです。

しかし、海外にも同じく嘘ニュースを発信する”News satire”と呼ばれるサイトが存在します。それも多数。一例を挙げますと、The Onion The Daily Mash The Pokeなど。ほかにも無数の嘘ニュースサイトが存在します。

News satire - Wikipedia

 

これらは知っている人からは「ソースは風刺ニュースサイト」つまり冗談を目的とした嘘ニュースサイトとわかるのですが、それがわからない人にとっては「一般的なニュースサイト」に見えてしまいます。見た目本当にそうですし。こんな感じで(むしろこのサイトの場合タイトルフォントが怪しいのでわかりやすいほう)。

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一応サイトの説明にそれらしいこと(ここは嘘ニュースというようなこと)を書いてある場合もあるのですが、困ったことに全く表記をしていないようなところもあります。

さらに日本人の視点から見ると、これが「海外サイト」であり「英語サイト」、つまり一目では読んで理解することが出来ない人が多いところとなるのです。おそらくですが同じような作りで同じような内容であっても、それが国内ニュースで、且つ日本語であった場合「あ、このニュースなんか嘘くさいな」という思考が働く人が多いと思います。しかし事情がよく分からない海外ニュースを英語で書いていると、「驚きのニュースだけど、あっちではそういうこともあるんだ」とそのまま信じ込んでしまいやすくなっているように思えます。

 

翻訳転載で余計嘘と分かりにくくなる

ただ、そのニュースサイトに掲載されたものがそのまま、つまり元ページの原文のまま日本で広まるということはあまりありません。多くの場合、その記事は日本語で翻訳され、それが拡散されることが多数です。

その拡散ルートとしては、前例から以下のものが挙げられます。

ニュースサイトやバイラルサイトから

日本のニュースサイトやバイラルサイトには、英語の記事を翻訳して紹介するものがけっこうあります。しかしそのソースには前述のような”News satire”をソースとしているものが見受けられます。そのサイトの情報がTwitterなどで拡散されてしまうケース、あと後述のようにそれ自体が2chやまとめサイトのソースとなってしまうケースが多いようです。

ただ「翻訳出来るくらいならそれらのサイトくらい知っておいてよ」とは思いますが、実は困ったことに英語圏内でもどういうルートかそれらに騙され、普通のニュースサイトにさも真実のように載ってしまう場合もあるため見分けがつかないことも多いのです。ですから一概にわざと”News satire”を翻訳して載せていると言えないものも多いのです。実際その後誤報と発覚したらちゃんと訂正するところもありますし(明らかに意図的っぽかったり、そのまま放置されているところも多数あるけど)。

 

2chやそのまとめサイトから

その”News satire”のもとや英語圏での転載されたサイト、もしくは翻訳された上記のようなニュースサイトの記事をソースとして2ちゃんねるに転載されることもあります(今だと正確には転載が禁止された2ちゃんねるではなく、転載を認められていて2ちゃんねるのスレをそのままコピーしている2ch.scのほう)。さらにそれをソースとして、まとめサイトに転載されることが高頻度で起こっておいます。おそらくですが、まとめサイトのPV数空見ると、拡散具合としてはこれが一番多いのではないでしょうか。

問題は訂正がなされないことがあること、さらになされても最初に拡散された記事通知がその嘘タイトルのままRTされまくっていて、拡散してしまうこと。前回書いたニュースでも、デマと指摘した後にもその最初の記事のTweetは消してないのかRTで拡散され続けていたりします。で、訂正したとしてもだいたい追記方式なので、そのTweetは流れないし。

正直、日本のニュースも含めてまとめサイトのニュースは他で確認を取るまで信用しない方が安全だと思われます。

 

Twitterから

これは”News satire”の記事の要約を翻訳したものが、そのままTwitterで拡散してしまう場合。これも”News satire”のリンクがあれば気づきやすいのですが、多くの場合はそのリンクがなく更に転載されているところのリンクや画像だけというケースが多く、わかりにくくなっています。

 

上記のどれの場合であっても、正直な話、わざとデマをばらまこうとしているのではないのなら、一度は同じタイトルや画像検索かけるくらいはやってほしいとは思うのですが。

 

まとめや対策

最近、以上のような過程で海外の嘘ニュースがよく流れてしまっているので、ソースがわからないネットに流れる海外の驚愕系ニュースはすぐに信じてRTしたりせず、一度嘘を疑い、確認した方が安全でしょう。ちなみに後から訂正するのはもちろんいいことですが、最初の拡散よりも訂正のそれのほうが圧倒的に低いのはいつものパターンなので。

出来れば全ての情報においてその確認をしたほうがよいのですが、手間がかかるしなかなかそうもいかないので、せめて出所が怪しいものだけでもその癖をつけると、デマを拡散してしまうことを低く抑えられると思います。もちろんこれは日本国内での記事も含めて。

 

それと先日ちょうどこのようなニュースがありました。

ネット上の「偽ニュース」排除 世界の報道機関など連携 - 日本経済新聞
【シリコンバレー=小川義也】世界の主要な報道機関やインターネット大手など30以上の企業や団体が、ネット上の「偽ニュース」排除に向けて動き出す。ソーシャルメディアに投稿される事件・事故などの情報の事実関係や、動画像の真偽を確かめる仕組みを連携して構築。ウソやデマを見抜くノウハウなども共有し、各報道機関やソーシャルメディアの信頼向上につなげる。2015年に米グーグルの支援を受けて設立された非営利団

これらの企業組織がどのような取り組みをするのかはまだ不明ですが、このような”News satire”にも影響があるのかもしれません。しかし嘘とわかりやすい元サイトよりも、それを普通のニュースに混ぜて転載、拡散するするサイトやTweetのほうに対策を施さないと、根本的解決にはならないような気がします。

明らかに悪質なデマ拡散をする所に対しての対策は必要でしょう。しかしながらどこまでが冗談(風刺)でどこからが悪質なデマかの線引きは難しく、一概に規制するとそれはそれで表現の自由の問題も絡んできます。結局のところ、情報の受け手がそれらに対する真偽判断能力やリテラシーを養うのが重要なのでしょう。

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