草津白根山の噴火で自衛隊員が円陣で噴石から守ったというデマ

2017年1月23日に発生した草津白根山では、訓練中の自衛隊員1名が噴石の直撃により死亡、1名が重傷となる痛ましい事件が起きた。

 気象庁は23日午前、群馬県草津町の草津白根山で噴火が発生したと発表した。噴火後に近くの草津国際スキー場で雪崩が起きたとの情報があり、消防や警察によると、雪崩や噴石によりスキー場で訓練中だった陸上自衛…

そしてネットでは23日あたりから、その現場で、自衛隊員が民間人親子を円陣を組んで噴石から守った、というようなツイートが流れ始める。

災害後、Tweet等で拡散

Twitterで一気に広まったのは、

というTweetが1万RT以上されたものが大きいが、それ以外にもそれ以外の引用をもとにして、まとめられたブログなども、検索するとよく出てくる。

匿名掲示板とTweet以外のソースが見当たらず

しかし、その円陣で守ったという明確なソースを探ってみるが、全く見当たらない。報ステのテレ朝以外の各テレビ局はもちろん、各新聞社、それこそ三大全国紙から産経新聞などでもそれが書かれた記事を確認することは出来ない。国や行政機関などの発表でも同様。

しかし、まとめられたサイト等を確認すると、その情報元として以下のような書き込みからの引用が出てくる。調べると5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)のスキー・スノボ板の書き込みらしい

万座温泉・表万座・草津国際 part2

985名無しさん@ゲレンデいっぱい。2018/01/23(火) 14:12:23.99>>987>>988>>990>>992>>997
現地からです。
ゲレンデ内の避難は全員完了してます。
たまたま近くに自衛隊が居てくれて助かりました。私たち親子と噴石の間に円陣組んで立ちはだかってくれて、ずっと声を掛けてくれました。
円陣組んでくれた自衛隊の方、1名に石がぶつかったんですが、1度倒れたあと、また立ち上がって私たちを守ってくれました。
本当に感謝です。
避難終えてその自衛官と思われる若いお兄さんがタンカでヘリに乗せられてる所を見たときは涙が出ました。
どうかご無事で。
避難場所に警察官がいましたが、オロオロしてるだけで、機能していません。
自衛官の勇姿を見た直後だけに少し残念です。
今のところ死亡者はいませんが、行方不明者が2人とのことです。
山頂へスキー客が残っていないか、雪上車?で見に行ったパークスタッフ2名と連絡が
取れないそうです

というもので、これが5chや2ch.scなど各地のスレにコピペされているようだ。
そこからまとめサイトのスレ→Twitterというように、マイナーチェンジをされつつ広まっているのが、拡散ルートとして大きいと思われる。

また、Twitterアカウントにて

円陣組んでくれた自衛隊の方、1名に石がぶつかったんですが、1度倒れたあと、また立ち上がって私たちを守ってくれました。 本当に感謝です。 避難終えてその自衛官と思われる若いお兄さんがタンカでヘリに乗せられてる所を見たときは涙が出ました。 どうかご無事で。

と書かれたものも見つかったが、こちらは現在アカウント毎削除されている。5chとどちらが前かは不明。

※追記修正(2018/2/25 7:34)
当該ツイートのスクリーンショットを確認したところ、さらに全文のツイートも見つかったが、そちらに5chのスレNO(985名無しさん@~)も書いてあることから、こちらは前述の掲示板からのコピペであるようだ。

さらに、NAVERまとめも存在したようだが、現在削除されている。

当事者とされる書き込みの矛盾

では、これらの書き込みが本当かということになるが、まず、「自衛隊が円陣を組んだ」という情報は、前述の通りどのメディアも公的機関からも発せられていない。
さらに、ソースとして発見できた当事者と名乗る書き込みは、匿名掲示板に書かれたもので、根拠が薄い。また、釣りの可能性も高い。

また、NHKの報道では、被害に遭われた自衛隊の方の状況が以下のように報じられている。

噴石が背中を直撃か 草津白根山噴火で死亡した自衛隊員 | NHKニュース

群馬県の草津白根山の噴火で、訓練中に被害を受けた陸上自衛隊の隊員の救助の状況が、当時現場にいた隊員の証言から明らかになってきました。

それによりますと、被害を受けた陸上自衛隊の隊員8人は、23日午前10時すぎ雪の現場を想定したスキーの訓練で、今回の噴火口に近いコースにいたところ突然噴石が飛んできて巻き込まれました。

それからまもなく、軽傷だった隊員が、携帯電話でふもとにいた別のグループの隊員に連絡を取り助けを求めました。連絡を受けた隊員は、すぐにスキー場の救助担当者に連絡し、担当者がスノーモービルで現場に向かってけがをした隊員を大型のそりに乗せてふもとまで運んだということです

隊員は、すぐに病院に運ばれ、当初は意識がありましたが、その後容体が悪化し、およそ2時間半後に死亡したということです。

しかし、円陣はもちろんのこと、民間人がそこにいたという情報も書かれていない(そもそも自衛隊が訓練中の場所にどうして民間人がいるの?という話でもある)。
さらに救出がタンカ&ヘリではなくスノーモービルとそりだったなど、書き込まれていた状況と明らかに矛盾する。

また、噴石の落下時では、次々に噴石が降り注ぐ可能性や雪崩などの危険性もあり、その場から離脱し、噴石から防げるところへの避難が最重要であるはずなわけで、その場で円陣を組むのは実際の行動としては非常に不自然だと考える。

まとめ

以上のことから、

「『草津白根山の噴火で、自衛隊が親子と噴石の間に円陣組んで立ちはだかった』という情報は、ソースに根拠がなく、デマの可能性が非常に高い」としてよいだろう。

同じように、最初のコピペでは「避難場所に警察官がいましたが、オロオロしてるだけで、機能していません。 」と書いてあるが、その情報の信憑性も皆無に等しいと思ったほうがよいだろう。
(万一、覆す新事実が判明すればそれに合わせて訂正する)。

余談

この手の「美談」は、聞いている方にとっては感動的であるなど耳あたりのよいものとなる。しかしそれが真実ではなかった場合、周りにとっては耳あたりがよくても、当事者にとってもプラスになるとは限らない。真実ではないことを賞賛されたとしても気持ちの悪いものになるし、表面的には賞賛でも、それが思わぬ方向からデマとしての悪影響を受ける可能性もある。以下は以前書いたもの。

この記事は、以前他のブログ(消滅済)で書いたものですが、このブログでの扱っているものとやや似ているので、一部修正しつつ持ってきました。そのため一部文体がいつものこのブログの感じと異なっていますがご了承ください。 ちなみに元記事の作成は2015年8月1日ですので、リンクしてあるニュース記事もそのあたりのものになります。

そのようなこともふまえて、たとえ美談であるとしても、当人に迷惑を与えないためにも、その情報は真実か嘘かきちんと検証する必要があるだろう。

追記(2018/1/26/ 1:30)

この記事を最初に書いた後、他所でも検証がありました。

こちらでは陸上幕僚監部広報室の担当者に取材を行っている。

「ネット上の情報は把握しているが、全員の隊員から聞き取りできていない以上、それを完全に否定することも、肯定することもできません」

「ただ、聞き取りができる隊員の情報では、円陣を8人で組み、民間人を囲んで噴石から守ったということは、可能性として極めて低いと言えます」

さらに讀賣新聞の記事が出た。犠牲になられた自衛隊員の方の状況が出ている。

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