このようなニュースがありました。
これによると、「Rh(-)マイナスAB型の血液の方を探しています。福岡県の大川に住む高校球児の血液が足りません。佐賀の病院に入院していますが、採血して3日以内の、新鮮血が必要です」という文面でTwitterやFacebook、ブログで10月12日頃から流れて、リツイートやシェアをされ続けているとのこと。
しかし、それに対し赤十字社の血液センターが発表。
これによると、「現在AB型のRh(-)の血液が不足しているといった事実はございません」とのこと。つまり、Rh(-)の血液を求めているということがデマであると、公式に発表されました。
赤十字血液センターの血液供給体制
同じく赤十字の血液センターによると、以下のようにあります。
日本赤十字社では、365日24時間体制で全国の医療機関に輸血用血液の供給を行っております。血液型別・種類別の過不足などが生じた場合においても、全国7つのブロック血液センターが中心となって血液の需給調整を行っており、医療機関からの依頼に対して、可及的速やかに血液を供給する体制を構築しておりますので、ご安心ください。
さらに最初のBuzzFeedの取材記事には、佐賀県赤十字血液センターの説明として以下のようにあります。
「AB型のRh(-)型よりも稀な血液型の人もいます。そういった場合には、医療機関から事前に連絡をもらい輸血の予定日を確かめた後、血液型情報の登録者の中から患者の血液型に適した人に連絡を取り、献血にご協力いただいています」
すなわち、SNSで募集を流すまでもなく、赤十字で必要な血液が行き届くような体制がきちんとできているわけです。
昔から度々流れる「Rh(-)の血液が足りない」
この情報についてのデマは「輸血を求めている」というところ。実際にRh-の患者さんはいるかもしれなくとも(もちろんそれはプライバシーの観点から病院から通常公表できない)、「輸血を求めている」部分はデマと言えます(ちょっと事情が特殊だった例外もありましたが、後述)。
しかしこの「Rh(-)(とりわけAB型)の血液が不足しているので輸血が必要」という内容の情報を「それを拡散して広めて」という「デマ」は昔から度々流れています。
調べてみると以下のようなものが見つかりました。
2013年2~3月あたりで流れたFacebookの投稿
まず最近では2013年。2013年2月から3月にかけて、Facebookにおいて『知り合いの息子が病気で輸血が必要で、O型かAB型のRh(-)の血液が必要であるが非常に稀少であるために力を借りたい』という投稿があり、それがシェアされまくるということがありました。しかし3月はじめに赤十字の血液センターから不足はしていないというリリースが出されました。
2009年にTwitterで流れたRh(-)輸血を求めるツイート
上の記事では2009年12月にTwitterにて「横浜市大病院(電話番号のため省略)まで もしAB型Rh-の方がいらっしゃいましたらご協力お願いします。緊急です 2009年12月14日の夕方に横浜の小学三年生の男の子が交通事故に会いました」という投稿がされたとあります。しかし問い合わせでデマと発覚。
2008年にチェーンメールで流れたRh(-)献血募集デマ
さらに溯ること約2年前の2008年2月、「B型RHマイナスの血液が緊急に必要な患者さんが昭和大に入院しているので、該当する血液の人は献血所で献血をしてほしい」というチェーンメールが出回り、同病院がメールは病院と一切関係ないという声明を発表することとなりました。
ちなみに2008年2月頃だとまだTwitterがそこまで広がっていなかった頃でした。
2003年にチェーンメールで流れたRh(-)輸血募集デマ
更に以前、2003年頃にもチェーンメールが出回っていたようです。その時のものは「悪性リンパ腫という病気でRhマイナスB型の血液を探している」というものだったそうですが、いろいろな亜種があったようです。もちろん募集はデマ。
2000年頃に出回ったチェーンメールの真実
しかしまだ溯ることが出来ました。2000年5月ごろ、仲間の妊婦が「全前置胎盤」で輸血が必要というもの。これもいわゆるチェーンメール。しかしこれは注目するところがあります。
このチェーンメールについても後日、日本医科大がホームページで見解を発表したのですが、「治療上の必要性から日本赤十字社や、AB型Rh(-)の方に対して供血のご協力をお願いしていることは事実」だったということ。しかしそれを知る一人がメールを投げかけたことで非公式のチェーンメール化してしまったとのこと。
情報の伝播や病院の見解含め、インターネット黎明期の時代ならではの出来事かもしれません。
現在も伝わるチェーンメールやデマがこれをもとにしているのか、別に独自発生したのか、それ以前にもあったのかは不明ですが、これ以上はインターネットのログ自体が残っていないので。まあそれ以前だとメールも普及してないというのもありますし。
まとめ
2000年のものはややその伝わった特殊なところもあるみたいですが、現在伝わっている輸血を募集するものはものは、最初に語った血液センターの輸血体制から考えて「デマ」と言い切ってよいでしょう。もし例外的な緊急事態があったとしても、それは公式のホームページなどからなされないとおかしいはずですし。
デマになっているパターンとしては、具体的な実在する病院名と患者の年齢(主に子供)、そして緊急だということが載せられるパターンが受け継がれていますね。そしてその度に名前が載った病院に問い合わせが殺到するというのも。
ともかく、
現在Rh-(マイナス)の血液は、その地域の輸血センターによって管理されおり、連絡体制も整っている。従って通常SNSやチェーンメールで輸血募集がなされることはないし、それはデマと判断してよい。
という結論でよいでしょう。くれぐれも病院の業務(それはほかの案件で本当に命に関わる作業をしているかもしれないような場合もある)を邪魔しないようにしましょう。